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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第39章 第十五話 【静かなる月】 其の壱
しかし、お彩は笑おうにも、どうしても笑えなかった。たとえ他所(よそ)さまの子でも、子どもの話を聞くだけで、お美杷の笑顔を思い出してしまうからだ。お美杷を失ってから、本当に―まるで自分の身体の一部をもぎとられてしまったかのような心持ちがずっと続いている。
「何でえ、何でえ。折角の桜餅を食べねえのかい? この桜餅は名付け親になってくれって頼みにきた孫娘の亭主とやらがわざわざ持ってきたらしいぜ。お前が食わねえのなら、俺が食っちまうぞ?」
喜六郎が冗談めかして言うのに、お彩は無理に微笑んだ。
「じゃあ、頂きます」
「何でえ、何でえ。折角の桜餅を食べねえのかい? この桜餅は名付け親になってくれって頼みにきた孫娘の亭主とやらがわざわざ持ってきたらしいぜ。お前が食わねえのなら、俺が食っちまうぞ?」
喜六郎が冗談めかして言うのに、お彩は無理に微笑んだ。
「じゃあ、頂きます」