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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐
女を食い物にして、その挙げ句、行き詰まってどうにもならなくなっちまって、きいさんを頼ってきたんだよ。きいさんは何しろ、あの気性で、上に何とかがつくほどのお人好しだから、昔なじみに頼られちゃア、一も二もなく助けてやったんだよ。普段なら口の堅いあの人のことだ、私なんかにそんな大切な内々のことまで喋りゃアしなかったんだろうが、流石に三十両となりゃア、大金だし、誰かに喋らずにはいられなかったのかもしれないねえ。通りすがりに、私に事の次第を洗いざらい話してくれたんだ。私はまァ、口は悪いことでは通っているが、その分、口も堅いんでね。私なら喋っても外には洩れない、大丈夫と思ったんだろうさ」
おとみの話によれば、若い頃は外見と口の巧みさで女を騙しては情人になりすまし、金を巻き上げて遊び暮らしていた富久三だった。
おとみの話によれば、若い頃は外見と口の巧みさで女を騙しては情人になりすまし、金を巻き上げて遊び暮らしていた富久三だった。