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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐
(自分の名前を仮名で書くことくらいならできる。いつも、ちょっとした手紙などは、おとみが代筆してやっていた。おとみはこう見えても、筆屋の女主人を長年やっているだけあって、読み書きも自在にこなし、見事な手跡(て)だ)。
 富久三は「花がすみ」に来たというが、お彩は外へ出ていたものか、それとも奧に引っ込んでいたのか、富久三が来た件は知らない。
 あらましを話し終えたおとみは首を振った。
「きいさんは、どうやら、〝花がすみ〟を抵当に入れたらしいよ」
 「え」と、お彩は眼を見開いた。
「おとみさん、今、何て―」
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