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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第41章 第十五話 【静かなる月】 其の参
 市兵衛がお彩と過ごした月日は、まさにお彩という花が蕾から大きく花ひらいた貴重な一瞬だったといえよう。市兵衛は今、この女の存在を心から誇りに思えた。
 お彩にって、市兵衛に言った言葉は、けして負け惜しみや強がりではない。今でも、お彩は、お美杷を手放したこともやむを得なかったと思う。
 だからこそ、市兵衛にも敢えて、お美杷の消息は訊ねなかったのだ。
―あの子は元気にしていますか? どれだけ大きくなりましたか? もう歩くようにはなりましたか?
 本当は訊きたいこと、知りたいことは山ほどもあったのに、問いたい衝動を自らの奥底へと無理に封じ込めた。
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