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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第41章 第十五話 【静かなる月】 其の参
「山吹」といわれても、どうしても、お彩だという気がせず、誰か別の女郎かと思ってしまう。
市兵衛は、眼前の美しい女を見た。
緋色の長襦袢に前で結んで垂らした帯、―遊女のなりをしていても、お彩はどこか品の良さというものが備わっているようだ。市兵衛の身体の芯が熱く疼いた。
一方、お彩の方もこうして改めて市兵衛の存在を意識すると、嫌が上にも自分の今の立場を思い出すことになる。艶(なま)めかしい女郎部屋で男と二人きり、しかも今のお彩は「山吹」という名の市兵衛の敵娼(あいかた)だ。
「私はお前が他の男に抱かれてるところなぞ考えたくもねえ。だから、お前がここにいることを知って、すぐに逢いにきた」
市兵衛は、眼前の美しい女を見た。
緋色の長襦袢に前で結んで垂らした帯、―遊女のなりをしていても、お彩はどこか品の良さというものが備わっているようだ。市兵衛の身体の芯が熱く疼いた。
一方、お彩の方もこうして改めて市兵衛の存在を意識すると、嫌が上にも自分の今の立場を思い出すことになる。艶(なま)めかしい女郎部屋で男と二人きり、しかも今のお彩は「山吹」という名の市兵衛の敵娼(あいかた)だ。
「私はお前が他の男に抱かれてるところなぞ考えたくもねえ。だから、お前がここにいることを知って、すぐに逢いにきた」