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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第44章 第十六話 【睡蓮】 弐
和泉橋で市兵衛と別れたお彩は、そのまま「花がすみ」に寄った。あの夜、喜六郎には既に市兵衛の方から知らせがいっていたようだった。喜六郎はお彩がその日戻ってくることもすべて知ってはいたようであったが、それでも歓びは隠しきれず、いかつい顔を歪めて男泣きにおいおいと声を上げて泣いた。
―もう二度と、こんな馬鹿な真似はしねえでくれ。お彩ちゃんが身体を売った金でこの店を続けられたとして、それをこの俺が歓ぶとでも思ってたのか?
その後、喜六郎にいきなり右頬を打たれたときは、お彩は愕いた。
―お前の親父さんが生きていたなら、きっとこうすると思うぜ。手前の可愛い娘を売り飛ばして、自分だけがのうのうと生きていく親にだけはなりたくはねえぞ、お彩ちゃん。
―もう二度と、こんな馬鹿な真似はしねえでくれ。お彩ちゃんが身体を売った金でこの店を続けられたとして、それをこの俺が歓ぶとでも思ってたのか?
その後、喜六郎にいきなり右頬を打たれたときは、お彩は愕いた。
―お前の親父さんが生きていたなら、きっとこうすると思うぜ。手前の可愛い娘を売り飛ばして、自分だけがのうのうと生きていく親にだけはなりたくはねえぞ、お彩ちゃん。