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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第44章 第十六話 【睡蓮】 弐
お彩を気に入り、養女にしてこの店を継がせようとまで考えている喜六郎である。普段から、お彩の父親代わりだと自他共に認めていたのに、お彩が黙って吉原に身を沈めたことによほど衝撃を受けたに相違なかった。
打たれたお彩よりも殴った当人の喜六郎の方が泣いていた。殴った後で、喜六郎はお彩をそっと抱きしめた。
―よく帰ってきたな。さぞ辛かっただろう。だが、本当にもう二度とこんなことはしねえと約束してくんな。親孝行ってえいうのは、
親を安心させるのもその一つなんだぞ?
幸いなことに、富久三の失跡で衝撃を受けて倒れた喜六郎だったが、その後の経過は順調だった。心臓発作も一度として起きてはいない。町医者の伊東竹庵もこの調子なら、同じような発作を繰り返すこともなかろうと太鼓判を押しているほどだ。
打たれたお彩よりも殴った当人の喜六郎の方が泣いていた。殴った後で、喜六郎はお彩をそっと抱きしめた。
―よく帰ってきたな。さぞ辛かっただろう。だが、本当にもう二度とこんなことはしねえと約束してくんな。親孝行ってえいうのは、
親を安心させるのもその一つなんだぞ?
幸いなことに、富久三の失跡で衝撃を受けて倒れた喜六郎だったが、その後の経過は順調だった。心臓発作も一度として起きてはいない。町医者の伊東竹庵もこの調子なら、同じような発作を繰り返すこともなかろうと太鼓判を押しているほどだ。