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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第44章 第十六話 【睡蓮】 弐
「姉ちゃん」
店の方で声がして、お彩は我に返った。
慌てて引き返すと、二十歳ほどのお店者風の若い男が懐から銭入れを取り出している。あまり見かけない顔だ。男は勘定を済ませると、急ぎ足で店を出ていった。
「お彩ちゃん」
また呼び声に顔を上げれば、奥の席から二人連れの片割れが呼んでいる。これは常連で、二人とも宮大工をしている。佐野助という四十半ばほどの棟梁の下で働く若い者であった。さしもの込み合っていた店内も徐々に波が引くように客が減り、今は半分ほどになっている。
「済みません、何でしょうか」
店の方で声がして、お彩は我に返った。
慌てて引き返すと、二十歳ほどのお店者風の若い男が懐から銭入れを取り出している。あまり見かけない顔だ。男は勘定を済ませると、急ぎ足で店を出ていった。
「お彩ちゃん」
また呼び声に顔を上げれば、奥の席から二人連れの片割れが呼んでいる。これは常連で、二人とも宮大工をしている。佐野助という四十半ばほどの棟梁の下で働く若い者であった。さしもの込み合っていた店内も徐々に波が引くように客が減り、今は半分ほどになっている。
「済みません、何でしょうか」