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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第44章 第十六話 【睡蓮】 弐
お彩が盆を抱えてゆくと、哲蔵とかいう面長の男が言った。
「飯の大盛りを追加して欲しいんだ」
「はい、判りました」
お彩が頷いて、すっかり空になった丼を手にしたそのときだ。哲蔵の隣の―確か梅松とかいった―丸顔の男が早口でまくしたてた。
「でな、先の話の続きだけどよ。もう京屋では大変な騒ぎになってるって聞いたぜ」
お彩は、その言葉にハッとした。
確か、梅松はたった今、「京屋」と言わなかったか。が、梅松はお彩の思惑など素知らぬふりで、夢中で喋ろうとしている。
「なあ、聞いてるのかよ。あの氷の京屋と噂された男がよ―」
お彩が梅松を凝視しているのを見て、哲蔵が傍らの梅松の腹をつついた。
「飯の大盛りを追加して欲しいんだ」
「はい、判りました」
お彩が頷いて、すっかり空になった丼を手にしたそのときだ。哲蔵の隣の―確か梅松とかいった―丸顔の男が早口でまくしたてた。
「でな、先の話の続きだけどよ。もう京屋では大変な騒ぎになってるって聞いたぜ」
お彩は、その言葉にハッとした。
確か、梅松はたった今、「京屋」と言わなかったか。が、梅松はお彩の思惑など素知らぬふりで、夢中で喋ろうとしている。
「なあ、聞いてるのかよ。あの氷の京屋と噂された男がよ―」
お彩が梅松を凝視しているのを見て、哲蔵が傍らの梅松の腹をつついた。