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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第44章 第十六話 【睡蓮】 弐
「おい、良い加減にしろよ。そんな話なら、後でいくらでもできるだろ」
 もちろん、この二人はお彩が京屋の元ご新造であったことなど知る由もない。ここ半年ほど前からお彩目当てで通ってくるようになった新しいなじみ客なのだ。
 哲蔵にたしなめられ、梅松が初めて気がついたように頬を赤らめた。
「あ、済まねえ。つい話し込んじまって」
 お彩を見て、申し訳なさそうに言うのに、お彩は微笑んだ。
「良いんですよ」
 傍らの哲蔵が笑って梅松をつついた。
「こんなときじゃなけりゃア、お彩ちゃんがお前の方をじっと見てたら、少しは可能性があるのかと思うんだけどな」
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