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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第45章 第十六話 【睡蓮】 参
【参】

 その翌日、お彩は和泉橋を渡った。
 見慣れたいつもの風景がひろがる界隈だ。
 背後を振り返ると、喜六郎が橋の向こうにひっそりと佇んでいるのが見える。その背後に老中松平越中守さまのお屋敷がそびえている。見送りは良いと言ったのだけれど、どうしても来ると言い張ってきかなかったのだ。
「元気でな。もう帰ってきても良いとは言わねえぞ」
 まるで娘を嫁に出す実の父親のような物言いに、お彩の眼にこらえていた涙が一挙に溢れ出た。
「門出に涙は禁物だ。笑って行け」
 喜六郎は渋面で言った。
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