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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第7章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の壱
 むろん、最初から立ち聞きなぞする気は毛頭なかったのだ。が、その声は父のものではなく、お彩の聞いたこともない男のものだった。
「それにしても、伊八さん、実の子でもねえあの子をよくここまで立派に育ててくれたな。とっくにお絹さんも亡くなっちまったっていうのに」
 その台詞は、お彩にとってあまりにも衝撃的であった。背後にいた伊勢次が息を呑む気配が伝わってきても、お彩はそんなことには最早頓着しなかった。
―今、今、何て言ったの? 実の子でもないって、どういうこと? 私がおとっつぁんの実の子どもじゃないっていうこと―?
 お彩の心は春の嵐に舞い狂う花びらのように烈しく揺れた。
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