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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐
「俺は八方手を尽くしてお絹のゆく方を探し続けた。やっと見付けた時、お絹の腹の子は八ヶ月になっていた。俺はお絹を迎えにいった。そして、二人でまた江戸に帰ってきたんだよ」
「私なんか生まれない方が良かったんだわ」
お彩が落とした呟きに、伊八の眉がつり上がった。
「おい、お前、今、何て言った?」
お彩は低い声で繰り返した。
「私なんて生まれてこなければ良かったって言ったのよ。だって、そうでしょ。私がいたせいで、おっかさんは一人で苦しんで、おとっつぁんと別れようとさえしなければならなかったのよ。おとっつぁんだって、どこの誰の子が判らない私を自分の娘として育てなきゃならない羽目になったんじゃない。私が皆を不幸にしたようなものだわ」
「馬鹿野郎!!」
「私なんか生まれない方が良かったんだわ」
お彩が落とした呟きに、伊八の眉がつり上がった。
「おい、お前、今、何て言った?」
お彩は低い声で繰り返した。
「私なんて生まれてこなければ良かったって言ったのよ。だって、そうでしょ。私がいたせいで、おっかさんは一人で苦しんで、おとっつぁんと別れようとさえしなければならなかったのよ。おとっつぁんだって、どこの誰の子が判らない私を自分の娘として育てなきゃならない羽目になったんじゃない。私が皆を不幸にしたようなものだわ」
「馬鹿野郎!!」