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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐
いきなり頬に強い衝撃を感じ、お彩は唖然とした。生まれてこのかた、父に叩かれたことなぞなかったのだ。
伊八は声をわななかせていた。
「俺がいつ、不幸だと言った、え? 言ってみろ。俺もお絹もお前がいたお陰でどれだけ幸せだったかしれやしねえ。元気に育つお前の姿を間近で見るのが俺たちのいちばんの愉しみだったんだぜ。お前がいたからこそ、俺たちは生きてこられた。良いか、お彩、お前は父ちゃんとおっかさんの生き甲斐そのものなんだ。お絹が亡くなっちまった今でも、それは何も変わりゃしねえ。お前は父ちゃんの宝なんだよ」
「―おとっつぁん」
伊八は声をわななかせていた。
「俺がいつ、不幸だと言った、え? 言ってみろ。俺もお絹もお前がいたお陰でどれだけ幸せだったかしれやしねえ。元気に育つお前の姿を間近で見るのが俺たちのいちばんの愉しみだったんだぜ。お前がいたからこそ、俺たちは生きてこられた。良いか、お彩、お前は父ちゃんとおっかさんの生き甲斐そのものなんだ。お絹が亡くなっちまった今でも、それは何も変わりゃしねえ。お前は父ちゃんの宝なんだよ」
「―おとっつぁん」