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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第10章 第三話 【ほたる草】 其の弐
【其の弐】

 それから数日が経った。大和屋からは何の連絡もないままに日は過ぎていた。その日の朝、お彩はいつものように店の前に水を打っていた。こうして少しでも、これから「花がすみ」を訪れる客が暑さを感じないで済むようにとのお彩なりの細やかな心遣いでもある。
 今日も蒼色の可憐な露草は懸命に小さな花を咲かせている。残りの水を少しだけかけてやると、心なしか花も歓んでいるように見えた。
 その時。露草を眺めているお彩の頭上から声が降ってきた。
「ホウ、ほたる草だねえ」
 しゃがみ込んでいたお彩は立ち上がって、声の主を見た。
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