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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第10章 第三話 【ほたる草】 其の弐
露草は何ということはない雑草の一つだけれど、ほたる草などとたいそうな名で呼べば、何か趣のあるものに思えてくる。たいていの場合、男が女の前でこんな台詞を吐けば、いかにも気障ったらしく聞こえるものだが、この男が口にしても、いささかも嫌味にも不自然にもならないところが不思議だ。
が、同じ美しい男とはいっても、陽太とこの男では太陽と月ほどの差がある。陽太も上背があり、すれ違う者が思わず振り返らずにはおれぬほどの美貌だが、この眼前の男のような浅薄さは微塵も感じられない。この男―小巻の良人偉兵衛にはどこか軽薄な他人を見下したような雰囲気があった。
が、同じ美しい男とはいっても、陽太とこの男では太陽と月ほどの差がある。陽太も上背があり、すれ違う者が思わず振り返らずにはおれぬほどの美貌だが、この眼前の男のような浅薄さは微塵も感じられない。この男―小巻の良人偉兵衛にはどこか軽薄な他人を見下したような雰囲気があった。