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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第10章 第三話 【ほたる草】 其の弐
小巻には申し訳ないけれど、お彩はひとめでこの男が嫌いになった。できれば、あまり拘わりたくない類(たぐい)の人間である。小巻が「花がすみ」に突然、戻ってきてから既に数日が経過している。小巻は生後二カ月になったばかりの敬次郎を伴って帰ってきているのだ。
何故、もう少し早く様子を見にきてやらなかったのかと思えば、この男の神経も疑いたくもなる。妻や我が子のことが少しも気がかりではなかったのだろうか。
それとも、この男の頭の中には吉原にいる馴染みの女郎喜久乃のことしかないのだろうか。
「この花は何となくあなたに似ているねえ」
偉兵衛の長口舌がまだ続きそうなのを、お彩は遠慮なしに遮った。
「小巻さんなら、敬次郎ちゃんを連れて今は近くのお稲荷さんまで出かけなさってます」
何故、もう少し早く様子を見にきてやらなかったのかと思えば、この男の神経も疑いたくもなる。妻や我が子のことが少しも気がかりではなかったのだろうか。
それとも、この男の頭の中には吉原にいる馴染みの女郎喜久乃のことしかないのだろうか。
「この花は何となくあなたに似ているねえ」
偉兵衛の長口舌がまだ続きそうなのを、お彩は遠慮なしに遮った。
「小巻さんなら、敬次郎ちゃんを連れて今は近くのお稲荷さんまで出かけなさってます」