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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第10章 第三話 【ほたる草】 其の弐
その取りつくしまもない態度に、流石に調子の良い男もやや鼻白んだ風を見せた。
「そうかい、それは生憎なことだ。折角こうして日本橋から出かけてきたんだが」
が、言葉とは裏腹に、偉兵衛の顔にはいささかも残念そうな表情はない。
「それよりも、お前さんは〝花がすみ〟に勤めているのかえ? あまり見たことはない顔のようだ」
偉兵衛の視線は不躾にお彩に注がれている。まるで品定めをしているかのような嫌らしげな眼には、いかにも好き者らしい下品な卑猥さがあり、お彩は眼の前のこの男の頬を平手打ちにしてやりたい衝動に駆られた。
「折角お越しになられたのですから、どうぞ中にお入りになって下さい。お稲荷さんはすぐ近くですから、お二人ともすぐに戻られるでしょう」
お彩は込み上げる嫌悪感と怒りを抑え、努めて愛想良く言った(つもりだった)。
「そうかい、それは生憎なことだ。折角こうして日本橋から出かけてきたんだが」
が、言葉とは裏腹に、偉兵衛の顔にはいささかも残念そうな表情はない。
「それよりも、お前さんは〝花がすみ〟に勤めているのかえ? あまり見たことはない顔のようだ」
偉兵衛の視線は不躾にお彩に注がれている。まるで品定めをしているかのような嫌らしげな眼には、いかにも好き者らしい下品な卑猥さがあり、お彩は眼の前のこの男の頬を平手打ちにしてやりたい衝動に駆られた。
「折角お越しになられたのですから、どうぞ中にお入りになって下さい。お稲荷さんはすぐ近くですから、お二人ともすぐに戻られるでしょう」
お彩は込み上げる嫌悪感と怒りを抑え、努めて愛想良く言った(つもりだった)。