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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第10章 第三話 【ほたる草】 其の弐
「それに旦那さんなら板場の方にいらっしゃいますし」
 喜六郎はいつものように仕込みの最中だった。お彩が慌ててつけ加えると、偉兵衛は大仰に首を振った。
「いや、今日のところはこれで失礼するよ。お前さんの前でこんなことを言うのも何だが、私はどうもあの舅どのは苦手だ。いつもむっつりと黙(だんま)りを決め込んで、一体何を考えているかしれやしれないところが不気味でね」
 偉兵衛はそう言うと、あっさりと踵を返して、足取りも軽く歩み去っていった。
―うちの旦那さんは、女たらしのあんたなんかに比べれば、よっぽど立派な良いお人よ!!
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