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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第10章 第三話 【ほたる草】 其の弐
「あ―」
 お彩の眼に涙が溢れた。陽太がお彩のために選んだ簪を手ずから髪に挿してくれた。そして、〝似合う〟と言ってくれた。思いもかけぬなりゆきに、歓びたいのに戸惑いの方が先に立って、うまく自分の感情や気持ちが表に出せない。そんなもどかしさがあった。
「何だ、気に入らなかったのか?」
 陽太が狼狽えたように言うのへ、お彩は慌ててかぶりを振る。
「違うの、これは嬉し涙」
 お彩は微笑んで、そっと陽太が挿してくれた手鞠の簪に触れた。
「大切にします」
「また、泣かせちまったかと慌てたぜ。泣いたり笑ったり、本当に忙しい娘(こ)だな」
 陽太は屈託ない笑みを見せていた。
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