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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第2章 第一話-其の弐-
 どこか翳りのある容貌が、笑うと屈託のないものになることに、お彩はどこかでホッとしていた。よくよく考えてみれば、お彩が男と直接に言葉らしい言葉を交わすのは、これが初めてだったのだ。
「急な雨に難儀していたところだったので、助かりましたよ」
 男は丁寧な物言いで言うと、手渡された手拭いで身体中の雫を拭き取った。
「いつもうちの店をご贔屓にして頂いて、ありがとうございます」
 何と言ったら判らなくて、でも、男と二人きりで閉ざされた空間に居るのがたまらなくて、お彩は咄嗟に言った。
 男がつと手を止めて、お彩を見た。
「ここに来ると、何だかホッとしてね。安心するというのかな、何となしに心が安らぐような気がするので、たまに寄せて貰うんですよ」
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