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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第2章 第一話-其の弐-
 似ているとは、自分が一体どこの誰に似ているというのだろう。この男を自分は知らないし、この店に客として現れるまで逢ったこともない。それに、似ていると言うからには、自分によく似た誰かを男が知っているということになる。
 男が突然発した言葉は予想外にお彩を惑乱させた。
 お彩はたまらず面を上げた。その一瞬、お彩と男の視線が絡み合う。妙な緊張が刹那、生まれた。それは紛うことなく―男と女の間に醸し出される独特の艶めいた感情であった。まだ、眼前のこの男について何一つ知らぬというのに、何故、このようなことが―と、お彩は当惑しながらも、自分が男に強く惹かれるいるのを意識せずにはいられなかった。
 そして。この瞬間、自分が惚れているはずの父の存在をすっかり忘れ果てていることに気付かないでいた。
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