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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第13章 第五話 【夏霧】 其の弐
何でも西瓜の汁を搾ったものを赤子に呑ませてやれば、喉の乾きも癒し、少々は解熱の効果もあるという。敬二郎は離乳もまだ先のことで、漸く重湯を数匙口にできるほどだが、西瓜の甘い汁ならば歓んで呑むだろう。初孫を掌中の玉と愛でる喜六郎の心遣いであった。
喜六郎は何かにかこつけて、日本橋の方へと出かける。初孫の誕生からは、ますます暇があれば大和屋に敬二郎の顔を見にゆくようになった。が、今日は朝からずっと客足が絶えることなく、喜六郎はどうにも店から離れることは叶いそうもなかった。それで、お彩が代理で大和屋に西瓜を持参したのである。
花見時季は近くの随明寺を訪れる花見客が「花がすみ」に立ち寄ることも多く、朝は早くから夜遅くまで客がひっきりなしに訪れる。
喜六郎は何かにかこつけて、日本橋の方へと出かける。初孫の誕生からは、ますます暇があれば大和屋に敬二郎の顔を見にゆくようになった。が、今日は朝からずっと客足が絶えることなく、喜六郎はどうにも店から離れることは叶いそうもなかった。それで、お彩が代理で大和屋に西瓜を持参したのである。
花見時季は近くの随明寺を訪れる花見客が「花がすみ」に立ち寄ることも多く、朝は早くから夜遅くまで客がひっきりなしに訪れる。