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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第13章 第五話 【夏霧】  其の弐
 が、それを除けば、大抵は客が集中するのは昼飯、夕飯時、それに一杯呑んだ帰りの酔客が来る夜―掛行燈の灯を消すよりも一刻ほど前と決まっている。
 商売繁盛は結構なことだけれど、何も極上の西瓜が届いた日に限ってと喜六郎は恨めしげな顔でお彩を送り出した。大和屋を訪れた際、小巻が敬二郎を抱いて出てきたが、敬二郎は話に聞くよりはよほど元気そうだった。熱も今朝にはすっかり下がり、小巻の乳をよく飲むようになったという。
 以前は気随気儘で、他人の気持ちなぞ歯牙にもかけなかったような彼女だが、敬二郎を生んでからというもの、まるで別人のように他人に労りを見せ、気遣いのできる女性となった。恐らく出産という気の遠くなるような大仕事を成し遂げ、小巻なりに考えるところがあったのだろうが、まさに、母は強しである。
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