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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第2章 第一話-其の弐-
やや勢いはなくなったとはいえ、雨は依然として降り続いている。止めた方が良かったのかもしれないが、お彩はこれ以上、不思議な男と一緒にいることに耐えられそうにはなかった。父と一緒いると感じる息苦しさのような―いや、男と共にいるときの苦しさはもっと烈しい。まるで呼吸さえ止まってしまうかのようだ。
お彩は男の使った手拭いをそっと握りしめた。男がたった一瞬触った頬に指で触れてみる。その場所からほのかな熱が生まれ、身体中にひろがってゆくような不思議な快さを感じていた。うっすらと熱を帯びた箇所に手拭いを当てると、ひんやりと冷たく、雨の匂いが香った。
その時。
お彩の背後でいきなり声が響いた。
「お彩ちゃん、あの男は誰なんだい?」
愕いて振り向くと、伊勢次が佇んでいた。
お彩は男の使った手拭いをそっと握りしめた。男がたった一瞬触った頬に指で触れてみる。その場所からほのかな熱が生まれ、身体中にひろがってゆくような不思議な快さを感じていた。うっすらと熱を帯びた箇所に手拭いを当てると、ひんやりと冷たく、雨の匂いが香った。
その時。
お彩の背後でいきなり声が響いた。
「お彩ちゃん、あの男は誰なんだい?」
愕いて振り向くと、伊勢次が佇んでいた。