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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第13章 第五話 【夏霧】  其の弐
 おきみが再び口を開いた。
「それが喜六郎さんにあっさり拒絶されちまって、つい勢いで承平があの人の子だとなんて言っちまったんです。―つくづく馬鹿な女
ですよね。嘘に嘘を塗り重ねて、余計にその嘘にかんじがらめにされて、そのせいで惚れた男(ひと)には嫌われちまってさ」
「おきみさん、一つだけ訊いて良いですか」
 お彩は、おきみに訊ねずにはいられなかった。
「おきみさんが旦那さんを想うその気持ちには、本当に嘘や偽りはなかったんですよね?」
「ええ、あの人に惚れたその気持ちだけは、正真正銘の本物ですよ。それだけは誓って言えます」
 おきみは、今度もまた躊躇うこともなく断じた。それから、おきみは訥々と語った。
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