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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第14章 第六話 【春の雨】  其の壱
「正確に言うと、伊勢次さんではなくて、伊勢次さんと今までのようにお話したりできなくなるのかもしれないって、そう考えるのが怖かったんです。折角、私なんかをお嫁さんにって言って貰ったのに、それをお断りしたら、伊勢次さんとはもうお友達でいられなくなるのかなって考えると、なかなか言い出せなかったんです」
「―お友達、か」
 伊勢次が嘆息混じりに呟いた。男にとって惚れた女から「友達でいたい」と言われることほど情けないものはないだろう。「あなたは良い人だ」と言われるのと、全く同じ理屈である。
 お彩は慌てて言った。
「それが私の我が儘だってことは百も承知してます。でも、私は伊勢次さんをお兄ちゃんのように思ってきたし、これからもずっと色々お話できたら良いなと思ってたので、ついそんなことを考えしまいました」
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