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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】  其の弐
 もし陽太がお彩を疎ましいものだと思い始めているのなら、こうして縋って逢いたいと泣けば泣くだけ、余計に陽太の心はお彩から離れてゆくだろう。
 いや、陽太の方は、もしかしたら、お彩を端から遊びの相手とさえ見てはいないかもしれないのだ。惚れているのはお彩だけで、陽太は気紛れに小娘に付き合っているだけにすぎないのかもしれない。
 様々な疑惑がお彩の中をよぎっていった。陽太は逞しい腕にお彩を抱いて、じっとお彩のなすがままに任せている。その手が躊躇いがちにお彩の背を撫でた。
「ごめんなさい、私、こんなことを言うつもりはなかったのに」
 陽太が何も言わず辛抱強く待ったお陰で、お彩はひとしきり泣くだけ泣いたら、少しは気が軽くなった。
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