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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第17章 第七話 【雪花】 其の弐
 そう思うのに、何故か涙が溢れ、つうっと白い頬をころがり落ちていった。まるで、もう一人の自分を自分で殺してしまったような気分で、無性に哀しくてやりきれない。お彩は慌てて涙をぬぐった。
 明日にでも父の許を訪れ、心当たりを探してくれるように頼んでみようと思いながら歩き出そうとしたそのときのことだ。
「お彩―さん」
 聞き憶えのある声が間近で聞こえてきて、お彩は身を強ばらせた。
 あれほど逢いたいと願った相手なのに、振り向くのが怖かった。
「随分とお見限りだったんですね」
 敢えて振り向かず、素っ気ない口調で返すと、男の笑いを含んだ声が聞こえた。
「しばらく逢わねえ間に、いっぱしの口をきくようになったな。さては、他に男でもできたかな」
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