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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第17章 第七話 【雪花】 其の弐
 男のおどけた口調から戯れ言であることは判っていた。お彩は勇気を振り絞って、つと振り向いた。できるだけ何げない風で言ってやった。
「私だって、社会勉強くらいは、ちゃんとしてますから」
 お彩は陽太とは眼を合わせようとはせず、その広い肩の向こう側を見つめていた。
 と、長身の陽太がひょいと身を屈めて、お彩の顔を覗き込んだ。
「冗談はここまでだ。お前さんは、どうして先刻から俺の顔を見ようとはしねえんだ?」
 お彩はそれでもなお、陽太から顔を背けた。
 それを勘違いしたのか、陽太がいきなりお彩を抱きしめてくる。
「済まなかった。こんなに長い間、放ったらかしにしちまって」
「止めて」
 お彩は叫ぶと、陽太の逞しい身体を両手で向こうへ押しやった。
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