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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第18章 第七話 【雪花】 其の参 
 静かすぎるほどの静寂が部屋の中に降り積もる。まるで鈍色の天から降りしきる白い雪の花びらのように。
 あたかも雪の振る音さえ聞こえてきそうなほど、空気が澄み切っていた。
 ややあって、その静けさを陽太が破った。
「女房はいねえ」
 そこで、遠い瞳になった。
「いや、正確に言えば、死んだ。もう十年も前に病で死んだよ」
 その口調は実に淡々としたもので、格別に感慨めいたものが感じられるわけではなかった。が、その平坦な口調からは、かえって陽太の凄惨な過去を物語っているように思えた。それは、他ならぬ陽太自身が押し殺した彼の中の過去であった。
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