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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第21章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱
「まあ」
客の気配を敏感に感じた女主がすぐに奧から現れた。伊八を認めた女主人の美しい面に満更愛想笑いばかりでもない微笑が浮かんだと思ったのは、伊八の思い上がりだったろうか。
「先日はどうもありがとうございました」
女主人が微笑んで礼を述べると、伊八はまた赤面しながら、「いや、どうも」とか何とかもごもごと口の中で言った。こんな情けない様をお彩に見られでもしたら、
―おとっつぁんたら、良い歳をして、みっともないったらありしゃしない。しっかりしなさいよ。
などと、さんざん、からかわれるに相違ない。お絹ひと筋だとお彩には豪語しながら、こうもいそいそと美貌の古着屋の女主人に逢いにくるとは、自分でさえ想像もしていなかったことだった。
客の気配を敏感に感じた女主がすぐに奧から現れた。伊八を認めた女主人の美しい面に満更愛想笑いばかりでもない微笑が浮かんだと思ったのは、伊八の思い上がりだったろうか。
「先日はどうもありがとうございました」
女主人が微笑んで礼を述べると、伊八はまた赤面しながら、「いや、どうも」とか何とかもごもごと口の中で言った。こんな情けない様をお彩に見られでもしたら、
―おとっつぁんたら、良い歳をして、みっともないったらありしゃしない。しっかりしなさいよ。
などと、さんざん、からかわれるに相違ない。お絹ひと筋だとお彩には豪語しながら、こうもいそいそと美貌の古着屋の女主人に逢いにくるとは、自分でさえ想像もしていなかったことだった。