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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第21章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱
女主人は眼を見開いて伊八を見つめた。
長い静寂―少なくとも伊八には果てしないほどに長く感じられた―の後、女主人が微笑んだ。
「お嬢さんは、お歓びなさいましたか」
「あ、いや。まだ、渡してはいねえんで」
伊八はしどろもどろになった。あの晴れ着は今度逢ったときに手渡そうと、大切に箪笥の引き出しに仕舞ってある。
女主人は別段気を悪くした風もなく、頷いた。
「こちらを見せて頂いても構いませんか」
伊八が頷くのを見て、女主人が包みを開いた。白くほっそりとした指が包みをほどくのを、伊八は固唾を呑んで見守った。
ほどなく桔梗の花をかたどった簪が現れた。
長い静寂―少なくとも伊八には果てしないほどに長く感じられた―の後、女主人が微笑んだ。
「お嬢さんは、お歓びなさいましたか」
「あ、いや。まだ、渡してはいねえんで」
伊八はしどろもどろになった。あの晴れ着は今度逢ったときに手渡そうと、大切に箪笥の引き出しに仕舞ってある。
女主人は別段気を悪くした風もなく、頷いた。
「こちらを見せて頂いても構いませんか」
伊八が頷くのを見て、女主人が包みを開いた。白くほっそりとした指が包みをほどくのを、伊八は固唾を呑んで見守った。
ほどなく桔梗の花をかたどった簪が現れた。