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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第21章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱
お彩はその時、客が残していった空の丼を片付けていた最中であった。店は丁度、昼の忙しい時間が終わったばかりのことで、たった今、最後の客が出ていったばかりだ。
お店者らしい若者がかき込むようにして飯を食べて出ていった後、お彩は丼を引きにいった。丸盆に丼を載せようとしたまさにその時、お彩の耳に響いた声があった。
―お彩ッ!!
物想いに耽っていたお彩は、その呼び声に突如として我に返った。
三日前、「花がすみ」の馴染み客伊勢次にお彩は再び求婚を受けたのである。伊勢次とは去年の春から約一年間、疎遠な状態が続いていた。それが今年の弥生の初めになり、再び以前のように気の置けない付き合いができるようになったのだ。
お店者らしい若者がかき込むようにして飯を食べて出ていった後、お彩は丼を引きにいった。丸盆に丼を載せようとしたまさにその時、お彩の耳に響いた声があった。
―お彩ッ!!
物想いに耽っていたお彩は、その呼び声に突如として我に返った。
三日前、「花がすみ」の馴染み客伊勢次にお彩は再び求婚を受けたのである。伊勢次とは去年の春から約一年間、疎遠な状態が続いていた。それが今年の弥生の初めになり、再び以前のように気の置けない付き合いができるようになったのだ。