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第21章 第九話　【夫婦鳥～めおとどり～】　　其の壱

　自分は自分が思っている以上に、市兵衛に惚れているのかもしれなかった。市兵衛をひたすら求める心が夜毎、あのような哀しい夢を見せるのだろう。
　しかし、京屋市兵衛と別れた心の傷は癒えようもなかったが、あの応えはあくまでもお彩自身が考えて選んだものだ。何をどう悩んでみたところで、仕方のないことだ。
　あのままずるずると二人の関係を続けていても、先に希望はなかった。市兵衛は確かにお彩の住まいまで訪ねてきて、お彩に所帯を持とうと言った。それどころか、お彩のためなら、大店京屋の暖簾さえ捨てても良いとまで言ったのだ。だが。