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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第21章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】  其の壱
 お彩は市兵衛のその瞳の奧に宿る孤独ゆえにいっそう彼に惹かれずにはおられないのだが、もしかしたら、その孤独とあの台詞には何らかの拘わりがあるのではないか、その時、ふとお彩は思ったものだった。
 そのことは、即ち、市兵衛の壮絶なまでの孤独の因(もと)が女房の死に起因しているということでもある。これまで市兵衛の孤独の原因を知り、彼をそこから解き放って上げたいと一途に願っていたお彩であったが、出合茶屋の一室であの台詞を耳にした時、思わず市兵衛の言葉を遮ってしまった。お彩は、あの時、あの台詞の続きを聞くのが無性に怖かったのだ。もし先を聞いてしまえば、もう二度と取り返しのつかないことになるような気がして―。
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