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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第3章 第一話-其の参-
 お彩は深く頷いた。真実を、お彩の気持ちを知れば、父は大きな衝撃を受けるに違いない。そして、自分の育て方が悪かったのかと悩むだろう。父は―伊八という男はそういう人間なのだ。真面目で堅物で、およそ融通が利かない。その分、情に脆く思いつめてしまうところがある。そんなところは実は、父と亡き母はとてもよく似た夫婦だった。父は母をよく「しょうのねえお節介」と揶揄していたものだったけれど、実のところ、父の気性も母と変わらないのである。
 お彩は大好きな父を―もちろん、この場合は娘が父親を想う心としてという意味だが―、哀しませたくはなかった。父を絶望のどん底に陥れるほどなら、このまま自分が悶々とした想いを抱え続けてゆく方が良い。
 だが、男がお彩に「気にしなくても良い」と言ったことは、お彩の心をいくばくかでも救ってくれた。自分なら我が娘に惚れられたと言われれば嬉しいと臆面もなしに言った男。
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