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第23章 第十話　【宵の花】　　其の壱

　ゆえに、女を買う男にしろ買われる女の方にしろ、一夜の夢と割りきって偽りの恋に身を焦がすのであった。吉原は一夜限りの虚飾の世界なのだ。
　ところが、その吉原での掟を最も心得ているはずの太夫が恋に落ちた。その相手が江戸でもきっての大商人である京屋市兵衛である。市兵衛の男ぶりは登楼する客たちの中でも際立っている。花魁も所詮は女だから、その水際立った美男ぶりに心奪われたとて、何の不思議もない。