パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第3章 第一話－其の参－

　お彩は自分の翳は実の父を愛してしまったことに因があると思い込んでいるが―、実は、その根は更に奥深いところに兆していたのである。そしてまた、男も壮絶な孤独を背に負うて生きていた。
　図らずも傷ついた魂同士が強く惹かれ合ったともいえるかもしれない。
　そして。
　お彩が悟った大切なことがある。
　随明寺での一件以来、お彩は毎日あの男のことばかり考えて過ごすようになった。同時に、あれほど恋い焦がれていた父伊八への思慕が次第に薄れていったのである。
　お彩は、伊八への想いが少女期特有の憧憬であったことを知った。当人は身を焦がすような恋だと信じ込んでいても、実は単なる憧れにすぎなかったという案配だ。あの男の存在が次第に大きくなってゆくにつれ、お彩は父への想いは何と儚いものであったかを知った。