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第27章 第十一話　【螢ヶ原】　　其の参　

　確かに見せかけだけから判断すれば、言い逃れはできない状況ではある。それに、そんなことになれば、伊勢次までをも罪に巻き込むことになってしまう。優しさから何の見返りを求めることもなく、お彩を受け容れてくれた伊勢次を科人にする、そんなことだけは絶対にあってはならないことだ。
　そこまで思い至らなかった我が身の世間知らずに、お彩は絶望的な気持ちになった。本当に、自分は何という浅はかで考えなしなんだろう。こんな女だから、市兵衛にも愛想を尽かされたのかもしれない。
　お彩が半ば自嘲的に考えた時、市兵衛の烈しいまなざしにぶつかった。凍てついてはいても、その双眸はあたかも蒼白い怒りの焔が燃えているように見えた。