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第27章 第十一話　【螢ヶ原】　　其の参　

「嘘だ」
　しかし、振り絞るような声は、お彩にというより自分に言い聞かせているように聞こえた。
「お前は、けして、そんなことのできる女じゃねえ」
　お彩は即座に言い放った。
「いいえ、お前さまは何か勘違いをしていなさいます。確かに私は伊勢次さんよりもあなたを一旦は選びました。そりゃあ、男ぶりだって、あなたの方が上だし、何しろ、あなたには大店の旦那という世間的な立場と京屋の身代がある。でもね、私は、あなたの女房として京屋の内儀になって、つくづく愛想が尽きたんですよ。大店の内儀というものにも、あなたという男(ひと)そのものにもね。