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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第27章 第十一話 【螢ヶ原】  其の参 
窮屈なばかりの暮らしで、奉公人たちには成り上がり者と白い眼で見られて、頼りにするあなたはいつも私のことなんぞ放ったらかしで商いにかまけているか、吉原の馴染みの花魁に入れ揚げているばかり。こんなんじゃ、嫌気がさしたって、仕方ないでしょう?」
 心にもない台詞が次から次へと溢れる。その度にお彩の心からも血の涙が溢れ、したたり落ちた。
「お彩、私は遠い昔に一度、自分で自分の心を殺したんだよ。その日以来、私は生ける屍だと自分のことを思ってきた。夢を見ることを忘れ、人を愛し慈しむこともなく、商いひと筋に生きてきた。他人に〟氷の京屋〝と半ば畏怖され、半ば蔑まれながら、心を氷らせて生きてきた。氷になれば、夢を見る必要もない。夢を見なければ、それが破られることもない。
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