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第27章 第十一話　【螢ヶ原】　　其の参　

だが、お前が眼の前に現れ、俺はもう一度だけ、人を信じてみても良いかなと思ったんだ。もう一度夢見ることから始めようと思っていた。真に惚れた女となら、きっと今度こそ夢を一緒に見られると思った。―私は馬鹿な男だよ。夢など所詮は裏切られ破られるために存在するものなのに、そのことをずっと昔、いやというほど思い知ったはずなのに、またしても、つまらない期待をしてしまった」
　お彩は今の市兵衛の言葉に、京屋の上女中おみよの話を再び思い出していた。惚れた女を諦め、京屋の若旦那となった市兵衛は、遅まきながら、女房となったお市と二人で新しい生活を始めようとしたこともあったという。