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第27章 第十一話　【螢ヶ原】　　其の参　

　そこで、伊勢次は漸く、お彩の顔色が蒼白なことに気付いたようだった。
「おい、どうした、一体、何があったってえいうんだよ？　なあ、お彩ちゃん、黙ってちゃア判らねえぜ」
　刹那、お彩は泣きながら、伊勢次の胸に飛び込んだ。伊勢次が愕いたような顔で、お彩を見た。戸惑いながらも、おずおずとそのか細い身体を抱き寄せた。
「おい、本当に何があった？」
　次に、伊勢次の顔が強ばった。
「まさか、あの野郎がここに来たのか？」
　気遣わしげに顔を覗き込まれ、お彩は、泣きじゃくった。
「ごめんなさい、私、この子が伊勢次さんの子どもだって、あの人に言っちまったんです」