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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第28章 第十一話 【螢ヶ原】  其の四 
 それでも、あたかも何かに突き動かされるかのように、方々、伊勢次の姿を求めて探し歩いた。だが、伊勢次はまるでふっつりとゆく方を絶ってしまったように見つからない。
 焦りは募るばかりで、心当たりはすべて探し回った後、悄然と村外れの小道を歩いて家路を辿っていたときのことだった。いつも通い慣れた散歩道でもある道をとぼとぼと力ない足どりで歩いていたお彩は何げなく辻ヶ池の方を見て、眼を見開いた。
 池の汀に何かが浮いている―!
 お彩は狂ったように小走りで走った。こんなときには、思うようにならぬ我が身がもどかしい。
 早朝のこととて、小さな池にはあまたの睡蓮が花開いており、極楽浄土もかくやと思わんばかりの浄らかな光景がひろがっていた。
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