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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第28章 第十一話 【螢ヶ原】  其の四 
 だが、その浄らかな花と花の間に横たわるものを見て、お彩は絶叫した。
「伊勢次さんッ―」
 お彩は夢中で池に近寄り、伊勢次を引き上げようと試みた。大柄な伊勢次を到底お彩のか弱い力で持ち上げることは不可能であった。しかし、お彩は身重の身であることも水に濡れることも頓着せず、伊勢次を半ば引っ張り上げるようにして陸(おか)の上にあげた。
「伊勢次さんッ」
 お彩は伊勢次の名を呼び、その顔に自らの顔を寄せた。息遣いは既に絶えていた。夢中で唇を重ね、息を吹き込んでみる。だが、伊勢次は固く閉じた眼を二度と開こうとはしなかった。
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