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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第28章 第十一話 【螢ヶ原】 其の四
産み月に入って、流石に大きくなり過ぎたのか、赤子は大人しくしているようになった。もういつこの世に出てきても良いほどに、身体も大きく育ったのだろう。まるでお彩の胎内が狭くて動けないというように、それまでの活発さはどこへやら、鳴りをひそめていた。
その赤ン坊が急に大きく動いたのだ。締め上げた帯の上からでも、その動きが見えるほどであった。
自分の膨らんだ腹が大きく波打つのを見た刹那、お彩の脳裡に伊勢次の笑顔が鮮烈に蘇った。
腹の子が六カ月に入り初めて胎動を感じた夜、伊勢次はまるで我が事のように泣いていた―。
その赤ン坊が急に大きく動いたのだ。締め上げた帯の上からでも、その動きが見えるほどであった。
自分の膨らんだ腹が大きく波打つのを見た刹那、お彩の脳裡に伊勢次の笑顔が鮮烈に蘇った。
腹の子が六カ月に入り初めて胎動を感じた夜、伊勢次はまるで我が事のように泣いていた―。