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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第30章 第十二話 【花見月の別れ】 其の壱
おさきというのは、この長屋に住む女房連中の一人である。斜向かいに住んでいて、亭主は大工をしている留吉とかいった。留吉との間には七つになる男の子が一人いる。三十前の気の良い女だが、少々お喋りなのと詮索好きなのが玉に傷だ。
お彩にも好意的に接してくれ、井戸端で一緒になったときには、よく立ち話をしたものだった。
幸いなことに、お彩があやしてやると、お美杷は直に泣き止んだ。ホッとするお彩に、おきわの容赦ない言葉が投げつけられる。
「こんなことは言いたくはないけれど、その子だって、誰の子か判ったもんじゃない。聞けば、あんたは突然、ここに転がり込んできたっていうじゃないか。
お彩にも好意的に接してくれ、井戸端で一緒になったときには、よく立ち話をしたものだった。
幸いなことに、お彩があやしてやると、お美杷は直に泣き止んだ。ホッとするお彩に、おきわの容赦ない言葉が投げつけられる。
「こんなことは言いたくはないけれど、その子だって、誰の子か判ったもんじゃない。聞けば、あんたは突然、ここに転がり込んできたっていうじゃないか。