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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第30章 第十二話 【花見月の別れ】 其の壱
「く、薬を」
おきわが何やら言っている。お彩は、おきわの口許に耳を近付けた。
「何ですか」
「枕元に薬があるから―」
顔も見たくないというお彩に頼むほどなのだから、おきわにしてみれば、切羽詰まっていたのだろう。お彩は急いで枕元を見た。
小さな丸盆に淵の欠けた湯呑と小さな包みがあった。それが薬包らしい。
お彩が紙に包まれた粉薬をおきわに手渡すと、おきわは震える手でそれを開いて口に流し込んだ。続いて白湯の入った湯呑を渡す。おきわは物も言わずに、白湯をひと息に飲み干したが、咳き込んでいる状態では上手く飲み下せず、途中で何度かむせた。
おきわが何やら言っている。お彩は、おきわの口許に耳を近付けた。
「何ですか」
「枕元に薬があるから―」
顔も見たくないというお彩に頼むほどなのだから、おきわにしてみれば、切羽詰まっていたのだろう。お彩は急いで枕元を見た。
小さな丸盆に淵の欠けた湯呑と小さな包みがあった。それが薬包らしい。
お彩が紙に包まれた粉薬をおきわに手渡すと、おきわは震える手でそれを開いて口に流し込んだ。続いて白湯の入った湯呑を渡す。おきわは物も言わずに、白湯をひと息に飲み干したが、咳き込んでいる状態では上手く飲み下せず、途中で何度かむせた。