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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第30章 第十二話 【花見月の別れ】 其の壱
しばらくして、漸く、おきわの発作も治まったらしいのを見届け、立ち去ろうとしたお彩の視線が止まった。おきわの枕元には血糊がぺっとりと張り付いていた。お彩は愕然として、おきわを見た。おきわの病状が相当進んでいることは伊勢次から聞いていた。もう長くはないことも以前に伊勢次から知らされている。
だが、現実に、眼の前で血を吐くおきわを見たことは、かなりの衝撃であった。こんな有様のおきわを目の当たりにして、このまま去ることはできない。強くそう思った。
お彩は控えめに言った。
「もし良かったら、ここにいて、お世話させて頂けませんか」
「おっかさんが」と言おうとして、お彩は言葉を呑み込んだ。
だが、現実に、眼の前で血を吐くおきわを見たことは、かなりの衝撃であった。こんな有様のおきわを目の当たりにして、このまま去ることはできない。強くそう思った。
お彩は控えめに言った。
「もし良かったら、ここにいて、お世話させて頂けませんか」
「おっかさんが」と言おうとして、お彩は言葉を呑み込んだ。